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food

美味しい料理を堪能できるサスティナブルキッチン

[東京:日本]

サスティナブルキッチンROSY | kitchenrosy.com//

人・健康・環境に配慮したサスティナブルでおいしい食と空間を提供し、
未来を育んでいるレストランが東京・神田にある。

Voice : ROSY owner 森 敏氏

地球環境とオーガニック農家を守りたい

海外に比べて日本でのオーガニックの普及の遅れというのをすごく感じまして。少しでも日本でオーガニックの食が広まる活動をしていきたい。その中で2008年にオープンさせたのがサスティナブルキッチンROSYです。生産者さんをサポートする仕組みを作り、オーガニック農家を支えるという部分で、個人消費ではなかなかたくさんの量の野菜を食べたり、使ったりはできない中で、レストランを経営することによって、オーガニック農家から野菜を仕入れて、それを消費者の皆さんに美味しく提供しています。

私たち日本人が日本人でありながら、日本で作られる農産物をこれから10年先20年先食べていけなくなるんじゃないのかという危機感を持っています。高齢化社会になり、農家の担い手がどんどん減っていく中で、そういった環境に配慮し、農薬を使わないオーガニック農家というものがやはり少なくなってきている。環境に配慮し、そして健康にも配慮し、生態系を守っていくような素晴らしい農業をやっている方たちをやり続けられる仕組みを作る必要がある。そこから始まっています。農薬を使わない化学肥料を使わない遺伝子組み換えを技術を用いないというのがオーガニックという基準にはなるんですけども、それ以外にも自然栽培だったり、さまざまな農法があります。やはり環境に配慮し、生態系を守っていきたいです。

環境問題をおいしく解決する

SDGsとかサスティナブルとか皆さん環境問題の話になると難しいこととして捉えてしまったり、意識の高い方がだけ取り組んでいる。そういう捉え方をされるんですけど、私たちはそのハードルを下げることによって、環境問題をおいしく解決する。ビールを飲んだり、ワインを飲んだり、食事をすることで、その背景で環境に配慮されていた農家をサポートしていたりというかたちで、どなたでも社会課題をともに解決する場所として食の提供をしています。

契約農家さんとのFARM toTABLEという取り組みの中で、ただ農家さんから野菜を送ってもらうだけではなく、我々自身も農場に実際に行って土の状態を見させてもらったり、農作物がどのようにできているかということも見るのと同時に、例えばお店の中で出るコーヒーかすなどを農家の方に堆肥として使っていただいたり、そういったコンポストの取り組みもやっています。

ひとつひとつのディティールに気を配る

本当のサスティナブルというのは、日常の中でライフスタイルの中で未来のことを考えていくということがすごく大事で。私たちのお店でやっていることは、例えばこの建物もそうなんですけども、築70年の一軒家をリノベーションしています。店内で使っている素材は、国産の無垢の杉材で机を作ったり、棚を作ったりということで、日本の木を生かしたお店作りをしています。また、スタッフのエプロンやユニフォームは全てオーガニックコットンの素材を使っています。我々がお店を運営するに当たって、少しでも環境に配慮した取り組みという部分で、他にも様々なアイテムを取り入れています。例えば店内で使うプラスチックを減らしていこうという形で、ソフトドリンクもお出しするときには、プラスチックストローではなくてステンレスのストローを使っていたり。キッチンでは環境や健康に配慮した蜜蝋ラップを使ったり。麻素材のスポンジを使って汚れを落とすようにしたり、あとグリーンパンというベルギーで開発された有害物質を一切出さないというフライパンを使用しております。少しでも我々が環境に負荷のかからないレストラン運営をしていくということを心がけて、ひとつひとつのディティールに細かく基準を設けて運営をしています。

食を通じてコミュニティの場に

サステナビリティに関心がある方とか、オーガニックが好きだからという方がよく来ていただいているんですけれども、最近では海外からインバウンドのお客さんもたくさん来ていただいています。ここはコミュニティーの場として、ビーガンの方もベジタリアンの方も食物アレルギーをお持ちの方も、そしてお肉が食べたい方もどなたでも楽しんでもらえる場所にしたいそう思っておりますので、決して一部の方のためではなくて、皆さんがここで笑顔になれる食というものを心がけて提供をさせていただいております。

「ひとりの100歩」じゃなくて、みんなさんがつながって「100人の一歩」で社会を変えていこう。そういった取り組みをやらせていただいております。何か日本はこうあるべきだとか、座学だったり、セミナーが多くあったりしますが、学んでおしまいじゃなくてSDGs知ってるよでおしまいじゃなくて、実際にアクションを起こしていくこと。そういう体験だったり、実際に自分自身が変化の担い手として実践者になっていくことが大切ですね。環境に配慮する取り組みがある。街でゴミを拾う。実際に海外に足を運んで貧困の実態を目の当たりにしてくる。そういった自分自身が体験してアクションを起こしていくということがすごく大事だなと思います。

問題の一部に加担するのかor解決にアクションを起こすのか

ネイティブアメリカンの言葉で「地球は、未来の子供たちから借りているものなんだ」という考え方。やはり我々の世代が次の世代にそれをきれいな状態でバトンを渡すということはすごく大事だと思っています。本当にどんどん気温が上がってきていますし、農作物が採れなくなってくる。そんな危機があるので、やはり自分たちの生まれた国、ふるさとの食というものを私たち自身が真剣に考えて生産者さんをサポートし続けられる仕組みをつくっていく。そのためには、圧倒的に我々がどういった消費をするかということが大事になってくると思います。

いつどこでも何でも食べられるという感覚ではなくて、やはり本当に地球がこのまま過剰摂取だったり、大量生産やフードロスも含めて多々課題がありますので、ひとりひとりの暮らしの見直しというものがすごく大事で、今日何を食べるかによって、社会課題に対して、自分が問題の一部に加担するのか、解決にアクションを起こせるのか大きな違いがあるのかなと思います。飲食店でやらなきゃいけない部分は何かというと、その素材を作っている生産者さんとのつながりを大切にすることと、その素材の良さを引き出すテクニックが必要になってきます。ですので、適材適所という言葉がいいのかと思いますけれども、おいしい素材を作れる農家さんとコミュニケーションをとっていくことと、そこにテクニックを持った料理人に表現をしてもらうことが大事かなと思っています。