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food

食品ロスに立ち向かう廃棄食材レストラン

[アムステルダム:オランダ]

INSTOCK | www.instock.nl//

一流シェフが廃棄食材で作る最高の料理たち。
クリエイティビティが世界の食品ロスを減らす。

Voice : INSTOCK Operations Manager / ローライク・コーニングス氏

食品ロスの削減を叶える3つの事業

私はインストックのオペレーションマネージャーのローライクです。私たちは7年前にインストックの事業をスタートさせました。インストックを立ち上げた理由はただ一つ、世界中の食品ロスを減らすということです。みなさんもご存知の通り、世界中で生産された食べ物の1/3はゴミとして棄てられています。私たちはレストランやケータリング、また卸売やオリジナル製品の製造販売などの事業を通じて棄てられる食材を減らしたいと思い、会社を作り事業を始めました。

3つの事業に分けて組織を運営しています。ひとつは、余った食材のみを使うレストランやケータリング事業を担うインストックホスピタリティ、もうひとつは、“食品ロスの削減”をマインドの中心に置いたビールやグラノーラ、料理本などオリジナル製品を取り扱うインストックプロダクツ、そして最後に、余っている安全な食材の卸売を行うインストックマーケットです。自ら物流センターを立ち上げ、そこからレストランやケータリング、ホテルに食材を卸せるようにしました。この3つの組織それぞれが別々の形で、“食品ロス削減”に向けて全力で動いています。

残ったパンでビールを作り、ビールの残留物でグラノーラを作る

インストックでは、私たちのオリジナル製品も取り扱っています。ビールとグラノーラはそれぞれ2種類ずつ作っています。ビールは、BAMMETJES(バマチェス)ビール、PIEPER(ピイェーパー)ビールがあり、BAMMETJES(バマチェス)ビールは残り物のパンを再利用して作られています。生産プロセスもとてもよく考えられています。パンでビールを作ると、花のような豊かな苦味が生まれます。PIEPER(ピイェーパー)ビールは、余ったじゃがいもを使って作られています。このじゃがいもが、ビールの中にほのかな柑橘系のフレッシュさを与えてくれています。

また、グラノーラはビールの醸造過程における残留物を使用して作られています。ビールを醸造すると、アルコールになる過程でほとんどの糖が取り除かれるため、非常に糖が少なく、たんぱく質が豊富な残留物ができあがります。これは食べるのにもってこいの材料ですよね。それを使って2種類のグラノーラを作っています。ひとつはココナッツ、もうひとつはアーモンドのフレーバーです。糖が取り除かれているので、多少味をつけるためにフレーバーを加えて美味しくしています。ビールを作る過程で余ったものでグラノーラを作る。完璧な生産の循環の形ですよね。私たち自身もとても誇りに思っている部分です。

レストランだけでなく、物流から合理化

一番難易度が高かったところは、物流を合理化する部分です。ご想像のとおり、一つひとつの注文の裏にはたくさんの過程があります。幾度となく行う状態チェックやラベリングなど、見えない部分にたくさんの仕事があるのです。それでも私たちが事業を営利化できたのは、フードレスキューセンターと呼ばれる独自の物流センターを持ち、物流過程を合理化した点にあると思っています。この場所があるお陰で、余った食材などをレストランやホテルに卸すことができるし、さらに過程を簡素化できるのです。

最高に美味しい料理を、廃棄食材から

メニューづくりは食材ありきです。「いま何があるかな?」「何を最後に持ってこよう?」などリストを見ながら話し合って作っていきます。メニューはほぼすべて、棄てられるはずだった食材を使って作っています。今日使わない食材は取っておいて、必ず2週間以内には使用するようにしています。私たちはいまある食材から味や風味を考えてメニューを作るので、絶対に食材を無駄にすることはありません。いまあるもので新しい料理を考えるのです。

棄てられるはずだった食材を丁寧に精巧に調理して、印象深い味を持つプロの一品を作り上げようと頑張っています。元々はゴミとなり得たものを美味しい料理に生まれ変わらせるなんて、本当に素晴らしいことですよね。私たちはこのコンセプトが非常に気に入っているんです。そしてその一部を担えていることが嬉しいです。コミュニティ全体にもとても意味のあることだと思います。

クリエイティビティで意識は変えられる

みなさんに伝えたいメッセージは、世界中でどれだけの食品が無駄になっているのか、ぜひ気づいて欲しいということです。世界で生産された全ての食材の1/3はゴミとして捨てられているのです。その事実に気づいて、人々が作る過程、買う過程でもっと賢明になってくれることを願っています。また一方で、いまみなさんがすでに所持している食材を前に、もっとクリエイティブになって欲しいとも思っています。買い物に行く前に冷蔵庫の中を必ず確認してください。冷蔵庫に何があるのか、それで何が作れるのか。とても小さなことですが、それが大きな違いとなってくるのです。